カテゴリー 感染症 の記事一覧
 

レミエール症候群

更新日時: 2017/07/14  カテゴリ: ポケットガイド, 感染症

レミエール症候群(以降LSと記載)とは、上気道感染に引き続く内頚静脈血栓および菌血症、さらには敗血症性肺塞栓までを一括りにした症候群であり、約80年前(1936年)にフランスの細菌学者レミエール博士が自験例20例をもとに報告したものです。内頚静脈の化膿性血栓は肺だけ でな く全身に遠隔転移し、転移性の膿瘍や塞栓を形成し、種々の症状を呈します。この先生、よく20例も集めたと思いますが、それもそのはず、当時はまだペニシリンなどの抗菌薬が登場する前の時代だったのです。

1960年代になり上気道感染にペニシリンなどの抗菌薬が使用されるようになるとLSの罹患率は急激に減少し、“忘れ去られた病気(forgotten disease)”と呼ばれるようになりました。しかし1990年代から再び罹患率が増加したのは、上気道炎に対する抗菌薬の使用が制限されるようになったことが原因ではないかと推測されています。起炎菌は口腔内の常在菌であるFusobacterium属(F. necrophorumが主)が圧倒的に多く(90%)、一般に、血液培養でこの菌が検出されることが、本症の診断根拠となります。

初期症状は咽頭痛、頸部痛、発熱などの上気道炎症状ですが、この段階でLSが疑われることはなく、その後の内頚静脈の血栓性静脈炎の症状(頸部痛、頸部腫脹)や、それが遠隔転移した諸症状をもってLSが疑われます。諸症状とは、血栓性肺塞栓症による呼吸困難が重要ですが、その他にも、肝膿瘍の存在、化膿性脊椎炎による腰痛、脳膿瘍による症候性てんかん、などなど多彩な症状・所見を呈します。加えて血液培養からFusobacterium属が検出されることで本症の診断に至る、という診療のストーリーになります。

本症は小児や易感染性宿主(高齢者や基 礎疾患保有者)にも発症しますが、好発するのは30代前後の健康成人とされています。健康な成人が咽頭炎をこじらせて、非常に重篤な症状やバイタルサイン(ショックやSpO2低下など)を呈して来院するケースでは、本症を鑑別に挙げる必要があります。治療は、βラクタマーゼ耐性、および複数菌感染を考慮して、初期はABPC-SBTなどの広域βラクタマーゼ阻害剤が選ばれますが、Fusobacterium属と確定された後はメトロニダゾールの有用性も多く報告されています。(文責:佐野/新井)

参考リンク:http://appliedradiology.com/articles/lemierres-syndrome
(内頚静脈血栓と敗血症性肺塞栓のCT写真はこちら)

 

キュビシンの使用法

更新日時: 2013/03/01  カテゴリ: ポケットガイド, 感染症

抗MRSA薬 キュビシン(ダプトマイシン)の特徴

  1. 殺菌速度が速い
  2. 腎機能に及ぼす影響が少ない(投与量調節は下記の通り)
  3. 血中濃度モニタリング(TDM)の必要がない
キュビシン 腎不全 換算表

キュビシン 腎不全 換算表
(PDF 197 KB)

 

表1.疑わしい感染症別の経験的治療薬

更新日時: 2013/02/28  カテゴリ: ポケットガイド, 感染症

(日本版敗血症診療ガイドライン2012をさらに簡潔にまとめつつ、補足も行いました)

考えやすい原因 想定される原因菌 推奨薬 注意事項
市中肺炎 ●緑膿菌リスク無し
肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,レジオネラ,マイコプラズマ
●緑膿菌リスク無し
CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム) またはSBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン
+AZM:アジスロマイシン
◆過去3カ月以内の抗菌薬使用歴のある患者,過去3カ月以内に2日以上の入院歴のある患者,および維持透析患者は医療行為関連肺炎として治療
◆市中型MRSAの可能性があればVCM+CLDM:バンコマイシン+クリンダマイシンまたはLZD:リネゾリドを併用
●緑膿菌リスク有り
上記に加えて,緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌
●緑膿菌リスク有り
CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)
+AZM:アジスロマイシン
人工呼吸器関連肺炎,
院内肺炎,
医療行為関連肺炎
●緑膿菌リスク無し
肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,MSSA,感受性のある大腸菌や肺炎桿菌
●緑膿菌リスク無し
CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム)またはSBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン
◆抗MRSA薬の併用は,原因菌としてMRSAの可能性が高いと判断された場合に。
◆アミノグリコシドの併用には議論もあり。特にバンコマイシンとの併用下における腎障害の可能性に注意
●緑膿菌リスク有り
上記に加えて,緑膿菌を含む病院型のグラム陰性桿菌,MRSA
●緑膿菌リスク有り
CFPM:セフェピム,
TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)
以下の併用を考慮
±VCM:バンコマイシンまたはLZD:リネゾリド
±AMK:アミカシン
市中尿路感染症 主に大腸菌 ABPC:アンピシリン+GM:ゲンタマイシン
または
CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム)
 
カテーテルや
医療行為関連尿路感染症
大腸菌,緑膿菌,腸球菌 TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム,
IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)
またはCPFX:シプロフロキサシン
± GM:ゲンタマイシン
またはAMK:アミカシン
緑膿菌を含むグラム陰性桿菌および腸球菌のカバーを外すべきではない
カテーテルや
医療行為関連血流感染症
表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌(MRSAも含む),緑膿菌を含む病院型のグラム陰性桿菌 VCM:バンコマイシン

CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)
±
GM:ゲンタマイシンまたはAMK:アミカシン
±
FLCZ:フルコナゾールまたはMCFG:ミカファンギン
 
市中発症腹腔内感染症 バクテロイデス等の嫌気性菌,大腸菌等の感受性のグラム陰性桿菌 ABPC/SBT:アンピシリン/スルバクタム 緑膿菌リスクがある場合、TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリンを考慮
院内発症腹腔内感染症 上記に加えて,緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌 TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム,
IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)
±
VCM:バンコマイシン
±
FLCZ:フルコナゾールまたはMCFG:ミカファンギン
 
複雑性皮膚軟部組織感染症 ●市中発症で下記のリスク無し
レンサ球菌,MSSA,クロストリジウム
●市中発症で下記のリスク無し
PCG:ベンジルペニシリン+CLDM:クリンダマイシン
◆市中型MRSAが臨床的,疫学的に想定される場合LZD:リネゾリド併用
●海水・淡水への暴露
Aeromonashydrophila, Vibrio vulnificus
●海水・淡水への暴露
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)

CPFX:シプロフロキサシン
●糖尿病壊疽,虚血肢,医療行為関連

黄色ブドウ球菌,緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌
●糖尿病壊疽,虚血肢,医療行為関連
TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)
±
LZD:リネゾリド
市中発症髄膜炎 肺炎球菌,髄膜炎菌 高用量CTRX:セフトリアキソン(2g 12時間毎)(高用量CTX:セフォタキシム2g4時間毎)

高用量VCM:バンコマイシン(20mg/kg12時間毎)

アシクロビル
◆50歳以上,免疫不全,アルコール依存のある場合,Listeria monocytogenesを考慮し高用量ABPC:アンピシリン(2g 4時間毎)を併用
◆抗菌薬開始前にデキサメタゾン0.15mg/kg静注(2~4日間継続)
脳神経外科術後髄膜炎 MRSAを含む黄色ブドウ球菌,緑膿菌を含む病院型グラム陰性桿菌 高用量VCM:バンコマイシン(20mg/kg12時間毎)

高用量CFPM:セフェピム(2g 8時間毎)または高用量MEPM:メロペネム(2g 8時間毎)
 
発熱性好中球減少症 緑膿菌を含む病院型グラム陰性桿菌,MRSAを含む黄色ブドウ球菌 CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)

VCM:バンコマイシン
±
AMK:アミカシン
 
市中発症でフォーカスが不明 肺炎球菌,髄膜炎菌および大腸菌等の感受性グラム陰性桿菌 ●細菌性髄膜炎が否定できない
高用量CTRX:セフトリアキソン(2g 12時間毎)(高用量CTX:セフォタキシム2g4時間毎)

高用量VCM:バンコマイシン(20mg/kg12時間毎)

アシクロビル

GM:ゲンタマイシン(7mg/kg 1回のみ)
◆感染症専門医コンサルト
◆50歳以上,免疫不全,アルコール依存のある場合で細菌性髄膜炎が否定できない場合,Listeria monocytogenesを考慮し高用量ABPC:アンピシリン(2g 4時間毎)を併用
●細菌性髄膜炎は否定的
CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム)+GM:ゲンタマイシン(7mg/kg 1回のみ)
院内発症(または医療行為関連)でフォーカスが不明 緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌,MRSAを含む黄色ブドウ球菌 CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,
MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン)

VCM:バンコマイシン
±
AMK:アミカシン
◆ 感染症専門医コンサルト

※一般名・商品名一覧(略語アルファベット順)

  • AMK:アミカシン(=硫酸アミカシン)
  • AZM:アジスロマイシン(=ジスロマック)
  • CFPM:セフェピム(=マキシピーム)
  • CLDM:クリンダマイシン(=ダラシンS)
  • CPFM:シプロフロキサシン(=シプロキサン)
  • CTRX:セフトリアキソン(=ロセフィン)
  • CTX:セフォタキシム(=クラフォラン、セフォタックス)
  • DRPM:ドリペネム(=フィニバックス)
  • FLCZ:フルコナゾール(=ジフルカンカプセル)
  • GM:ゲンタマイシン(=ゲンタシン)
  • IPM/CS:イミペネム/シラスタチン(=チエナム)
  • LZM:リネゾリド(=ザイボックス)
  • MCFG:ミカファンギン(=ファンガード)
  • MEPM:メロペネム(=メロペン)
  • PCG:ベンジルペニシリン(=ペニシリンGカリウム)
  • SBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン(=ユナシンーS)
  • TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン(=タゾシン)
  • VCM:バンコマイシン(=塩酸バンコマイシン)
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