医療従事者向け ポケットガイド

ショックの概念と分類

更新日時: 2013/03/08  カテゴリ: ショック, ポケットガイド

ショックは、低血圧と同じような意味ですが、しかしある数値以下をもってショックとする、というような定義がありません。

臨床の現場ではだいたい収縮期血圧が90mmHg以下をショックと言いますが、普段血圧の高い人であればBP=100でもショックですし、逆に普段血圧の低い人であればBP=80でショックといえるかもしれません。つまり、ショックの定義は、血圧うんぬんというより、「組織(細胞)に十分な血流が送れなくなった」というのが正しい見方です(注1)。

(注1)たとえ90以上でも普段と比べて収縮期血圧が40以上低下した場合を、相対的ショックと呼んでいます。

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十分な血流が送れなくなったら、組織が酸欠になります。酸欠になると乳酸が増加します。よって乳酸はショックの有無や程度の良い指標と言えるでしょう。高乳酸血症あるいは乳酸アシドーシスの存在をもってショックと定義しても良いかもしれません。

なので、低血圧の患者さんを見たら、どのくらい危険なのかを知るために、乳酸値をチェックします。それで正常値であれば、「思ったほど重症ではない」と考えたりします(注2)。

(注2)乳酸値は、ショック時にその産生が亢進するだけでなく、肝・腎などからの排泄が低下しているために増加します。

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しかし、乳酸値が上昇しない状態でも、腎血流が滞り腎不全になることはあります。なので、ショックとは乳酸だけで解釈するのではなく、腎血流という観点でも考えたいところです。乳酸がたまっていなかったからといって、一晩放置しておけば、尿量が得られず翌日腎不全が完成しているかもしれません。

また、乳酸も溜まらず、腎機能も大丈夫で、しかし意識障害が発生することもあります。これは脳血流の減少による臓器不全であり、立派なショックです。もともと脳の機能が衰えている高齢者ではこのようなことがよくあります。肝不全が前面にでるショックもあります(ショックリバーというのかな?)。よって、ショックとは、臨床の現場で一義的に定義することは難しく、身体症状や検査所見全般を見る視野が必要です。

教科書的なショックの定義としては(UPTODATEより)、

Shock is a physiologic state characterized by a significant reduction of systemic tissue perfusion, resulting in decreased oxygen delivery to the tissues. This creates an imbalance between oxygen delivery and oxygen consumption. Prolonged oxygen deprivation leads to cellular hypoxia and derangement of critical biochemical processes at the cellular level, which can progress to the systemic level.

「ショックは組織還流障害の結果、組織での酸素需要と供給がアンバランスになり、細胞レベルでの低酸素症により生体の維持に必要な細胞機能が障害され、それが全身レベルの致死的な症状に発展すること」となっています。

つまり、ショックの定義は細胞のレベルに行きつきます。臨床の現場ではそれを身体所見や検査所見を用いて推測するということになります。話が元に戻りますが、やはり臨床の現場で大切なことは、収縮期血圧<90mmHgであれば、まずはショックを疑って最緊急で最大限の原因検索と治療を行う、さもなくば患者の命を落とすとになる、と腰を据えて臨むことが原則です。

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ところで、臨床の場で、ショック患者に遭遇したとき、どう鑑別するかが重要です。

もちろん、ショックだけにとらわれず、必ずA=気道、B=呼吸、C=循環、の順に評価して対応することが原則ですが、ABを確認しながらショックの原因について考えるなかで、よく忘れるのが閉塞性ショックです。

閉塞性ショックとは気胸と心タンポナーデ、それと肺塞栓です。閉塞性ショックとは、心臓は元気で循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのでショックとなるものです。

これまで元気だった患者さんが急にショックになった場合、①出血性ショック、②心源性ショック、③血液分布異常性ショック、④閉塞性ショック、をすべて思い浮かべて、順を追ってルールアウトしてください。常にすべて思い浮かべながら除外するのが大事です。

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ショック患者さんに出会ったときは落ち着いて以下の鑑別を行う(注3)

(注3)テキストによっては①出血性ショック、②心原生ショック、③再分配性ショックという分け方をしていますが、以下の4項目による分け方の方が思いだしやすいです。

①出血性ショック

  • 体表面あるいは皮下出血・・・全身を眺める
  • 上部消化管出血・・・貧血は?BUNは?黒色便は?NGT開放したら血性排液は?
  • 腹腔内出血・・・エコーでたまりを確認

⇒いずれのパターンも臨床でよく遭遇します。

②心原生ショック

心電図変化と心エコーです。
  • 心筋性・・・心筋梗塞、拡張型心筋症、タコつぼ心筋症など
  • 機械性・・・ASなどの弁膜症 他
  • 不整脈・・・徐脈性、頻脈性、ブロックなど

③血液分布異常性ショック

敗血症性ショック
  • 他のショックが否定的で感染フォーカスも明らか
  • 他のショックの否定的でフォーカス不明だが感染症を疑う
  • ICUでは上記に加えてプロカルシトニン、ビジレオカテーテル、PICCOカテーテル
    ⇒必ずしも四肢末梢が温かいわけではないことに注意。
アナフィラキシーショック
  • 発赤を呈します。入院患者の薬剤によるショックを現場では忘れがち!抗生剤開始した直後とか。
神経原性ショック
  • 頚髄損傷
薬剤によるショック
  • 麻酔薬の導入などで著明な血圧低下をきたすことあり
  • コリン作動性クリーゼ

④閉塞性ショック

  • 気胸(ショックに遭遇したら胸郭運動、聴診、レントゲンでこれを否定する)
  • 心タンポナーデ(エコーで否定。CV留置中の患者では心タンポナーデのリスクあり)
  • 肺塞栓症(ショックになるような肺塞栓はエコーで右心系が拡大し呼吸不全も合併)
  • その他(稀ですが収縮性心外膜炎、進行した原発性肺高血圧症)

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その他、アシドーシスでショックになります。たいていの場合、アシドーシスはショックの結果なのですが、「アシドーシスが先でショックが後」という場合もあります。てんかん重積の混合性アシドーシスなどで血圧が低い場合などです。これは何性ショックというのかな?おそらくアシドーシスにより心筋の収縮力が低下したことによるので、心原性ショックなのでしょうか。

新井 隆男

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