医療従事者向け ポケットガイド

COPDの急性増悪

更新日時: 2017/07/20  カテゴリ: ポケットガイド, 呼吸器

COPDの急性増悪(病態と治療)

COPDの病態は気管支粘膜の腫脹と肺胞の破壊であり、
「急性増悪」とはCOPDが急激に増悪した状態を指し、臨床的には、

  1. 労作時呼吸困難悪化
  2. 咳嗽増加
  3. 気道分泌物増加

などを指します。

よくある誘因として、

  1. 気道感染
  2. 肺炎
  3. 気管支攣縮(タバコ、粉じん、大気汚染、ウイルス性上気道炎)
  4. 心不全
  5. 気胸
  6. 肺塞栓

などがが挙げられます。
多くは感染が誘因となりますが、明らかな感染症が無い場合、上記4-6を考慮します。

COPD急性増悪の治療は、ABCアプローチが治療の基本です。

 A Antibiotics(抗菌薬)
 B Bronchodilators(気管支拡張薬)
 C Corticosteroid(ステロイド)

Antibiotics(抗菌薬)について

抗菌薬ですが、COPD急性増悪の誘因の気道感染で問題になる菌としては、肺炎球菌、モラキセラ、インフルエンザ桿菌を考慮します。入退院を繰り返す患者さんではMRSAや緑膿菌も考慮します。すなわち、まずはCTRX2gq24hもしくはABPC/SBT1.5-3gq6hで開始します。緑膿菌カバー必要な場合はCFPMTAZ/PIPCを選択します。投与期間は定まったものは無いものの、5-7日間の投与とそれ以上の期間の投与で差は無いと言われています。

Bronchodilators(気管支拡張薬)について

気管支拡張薬ですが、短時間作用型吸入β2刺激薬(SABA)がCOPD急性増悪の治療の要です。SABAには、®サルタノール、®アイロミール、®メプチン、®ベロテックなどがあります。吸入方法は加圧式定量噴霧式吸入器もドライパウダー吸入器もネブライザーも効果に違いはありませんが、入院を要するような患者さんでは手技の問題でネブライザーが良いと思います。

短時間作用型吸入抗コリン薬(SAMA)は®アトロベントや®テルシガンエロゾルですが、SABAと併用することがありますが、明確な効果が示されているわけではありません。
また、アドレナリン皮下注は不整脈や心筋虚血のリスクがあるため、COPD急性増悪に対しては推奨されていませんが、吸入がうまく出来ない場合は、やむなく使用することもあります。

気管支拡張薬の治療効果判定ですが、

  • 頻呼吸が落ち着いているか.
  • wheezeや呼吸音が改善しているか.
  • 呼吸補助筋使用が改善しているか.
  • 気道抵抗(吸気ピーク圧-吸気プラトー圧が)改善しているか.(正常は10以下)
  • 呼気時間短縮やピークフロー改善しているか.
  • auto-PEEPが改善しているか.

等をもって判定します。

Corticosteroid(ステロイド)について

コルチコステロイドですが、プレドニゾロン経口またはメチルプレドニゾロン点滴静注40-80mg/day(5-7日)が推奨されています。ステロイドは、経口も経静脈投与も効果に変わりはないとされ、抗炎症作用や粘液分泌・気管浮腫の改善の他に気管支拡張薬への反応を高める作用があるとされています。また、投与量や投与期間を増やしても効果に変わりなく、中止の場合、減量の必要がないとされています。 その他、COPD急性増悪時の治療薬として、アセチルしステイン(®ムコフィリン他)、アンブロキソール塩酸塩(®ムコソルバン他)などの喀痰溶解薬は、COPD急性増悪時に使用しても治療期間の短縮などの効果は無いが、症状改善の可能性はあります。

メチルキサンチン誘導体(®テオフィリンなど)は、COPDに関しては第2選択薬とされていますが、気管支拡張薬吸入、ステロイド投与と比較して効果に乏しく、めまい、嘔吐、振戦、副作用のリスクが高いとされています。

酸素療法について

酸素療法ですが、PaO2<60mmHgもしくはSpO2<90%の場合に酸素療法の適応ありとされています。pH<7.35もしくはPaCO2>45mmHgの場合は、換気補助療法を考慮します。補助換気療法の第一選択はNPPVです。high flow therapy(HFT)はNPPVと比較して3か月後の死亡率低下、挿管に移行する症例の減少が報告されています。HFTは軽度のPEEP効果、上気道の洗い流しによる換気の改善が認められ、COPD急性増悪の際の内因性PEEPや気道分泌物増加に対応できるとされています。今後HFTが普及してゆくことが予測されます。これら非侵襲的補助換気の効果なければ、躊躇せず気管挿管し、侵襲的換気療法に移行します。

改善時期の治療について

さて、急性期治療が奏功し、その後徐々に改善する時期の治療ですが、急性期治療で呼吸状態や全身状態が改善した場合、再発予防の為に長時間作用型気管支拡張薬を開始します。これは、基本的にステロイドの投与が終了するまでに導入します。具体的には、長時間作用型吸入β2刺激薬(LABA:®セレベント、®オンブレス)と長時間作用型吸入抗コリン薬(LAMA:®スピリーバ)が有効です。LABA、LAMAはCOPD急性増悪予防効果、QOLの改善効果の双方ともが認められていますが、LAMAの方が良好といわれています。すなわち、最初に使用するならLAMAが良いのですが、ただし緑内障や前立腺肥大に注意が必要です。また、LAMAとLABAの合剤(®ウルティブロ)は、コントロール不良なCOPDに良い適応とされています。

最期に、いわゆるasthma-COPD overlap syndromeでは吸入ステロイド(ICS)の効果が期待できるため、COPD急性増悪と違い、ICSを第一選択として導入します。(文責:坪内/新井)

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