医療従事者向け ポケットガイド

緊急心嚢穿刺

更新日時: 2018/01/25  カテゴリ: ポケットガイド, 循環器

穿刺部位の選択

心嚢液は均等に貯留するわけではない。隔壁形成により被包化された心嚢液も珍しくない[1,2]。

したがって穿刺部位を選択する際は、下に示す複数の全ての穿刺部位(傍剣状突起、胸骨左右縁、心尖部など;図参照)をエコーで確認し、最も刺しやすい場所を選択する。

最近の研究では、従来から推奨されている剣状突起アプローチより、胸骨左縁、次いで心尖部からのアプローチが優れているという報告もある[3,4]。

加えて、リアルタイムエコーガイド下で穿刺するのが最も安全とされている[5-7]。幼児や子供に対するアプローチ法の比較は、いまのところ行われていない。

図:心嚢の穿刺部位
胸骨左縁アプローチ:

最も多く選択される刺入部位である。針を垂直に刺し、胸骨左縁から第5か第6肋骨の上縁を通過させる(図参照)。

胸骨縁ギリギリであれば、肺が心臓を覆っていない。内胸動静脈の損傷を避けるためにも、胸骨縁から1cm以上離れて穿刺しないようにする。また、胸骨“右”縁であっても、エコーで他の部位より勝るのであればここから穿刺してもよい。

心尖部アプローチ:

心尖部アプローチ(図参照)は、穿刺部位から心臓への距離が最も近く、さらに心尖部の心筋が分厚く、走行する冠動脈も末梢枝であるため、最も心臓合併症が少ない。しかし同時に、気胸の合併が最も多い[8]。

穿刺部位は胸骨左縁から5cm以上外側の第5肋間or第6肋間or第7肋間である。針は肋骨上縁を通過させ、患者の右肩方向に進める。

*私(新井)個人的には、場合によっては、確実な心嚢穿刺を最優先して、気胸の合併に目をつぶる(必要に応じて胸腔ドレナージを追加する)ことは、一つの判断として有っても良いと思います。

剣状突起アプローチ [9,10]:

剣状突起左縁肋骨弓下(図参照)から穿刺。超音波が利用不可なら刺入角約30°で左肩を目標に盲目的に穿刺する。

通常5~8cmで心嚢内に到達する。肥満体形なら10cm程度必要。小児なら3cm程度で達する。

もしヒットしなければ、15°ずつ反時計周りに角度をかえる。最終的に右肩に向くまで角度を変える。

エコーガイドの場合、刺入路に肝左葉が入ってしまうことがある。この場合、他の穿刺ポイントに変更するか、他に選択肢がなければ経肝的に穿刺する。(文責:新井隆男)

◇◆◇

(参考文献)

1. Cooper JP, Oliver RM, Currie P, et al. How do the clinical findings in patients with pericardial effusions influence the success of aspiration? Br Heart J 1995; 73:351.

2. Tsang TS, Barnes ME, Hayes SN, et al. Clinical and echocardiographic characteristics of significant pericardial effusions following cardiothoracic surgery and outcomes of echo-guided pericardiocentesis for management: Mayo Clinic experience, 1979-1998. Chest 1999; 116:322.

3. Tsang TS, Freeman WK, Sinak LJ, Seward JB. Echocardiographically guided pericardiocentesis: evolution and state-of-the-art technique. Mayo Clin Proc 1998; 73:647.

4. Callahan JA, Seward JB, Tajik AJ. Cardiac tamponade: pericardiocentesis directed by two-dimensional echocardiography. Mayo Clin Proc 1985; 60:344.

5. Tsang TS, Enriquez-Sarano M, Freeman WK, et al. Consecutive 1127 therapeutic echocardiographically guided pericardiocenteses: clinical profile, practice patterns, and outcomes spanning 21 years. Mayo Clin Proc 2002; 77:429.

6. Cho BC, Kang SM, Kim DH, et al. Clinical and echocardiographic characteristics of pericardial effusion in patients who underwent echocardiographically guided pericardiocentesis: Yonsei Cardiovascular Center experience, 1993-2003. Yonsei Med J 2004; 45:462.

7. Hanaki Y, Kamiya H, Todoroki H, et al. New two-dimensional, echocardiographically directed pericardiocentesis in cardiac tamponade. Crit Care Med 1990; 18:750.

8. Brown CG, Gurley HT, Hutchins GM, et al. Injuries associated with percutaneous placement of transthoracic pacemakers. Ann Emerg Med 1985; 14:223.

9. Ellis H. The clinical anatomy of pericardiocentesis. Br J Hosp Med (Lond) 2010; 71:M100.

10. John RM, Treasure T. How to aspirate the pericardium. Br J Hosp Med 1990; 43:221.

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